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井上 ケイ Kei Inouye
井上 真紀 Maki Inouye

私がフラに出会った1970年代は、ハワイでは公教育でのハワイ語が禁止されていたので、一部のお年寄り以外話せる人はおらず、今のような形式のハラウ(学校)もほとんどありませんでした。日本でもフラに関心のある人は少なく、“ハワイの尻振りダンス”というイメージを抱く人も多かったように思います。1997年NHK教育TV“おしゃれ工房”、1998年の “趣味悠々~アロハフラ!フラダンス入門”で本格的なフラ講座を、というお話を頂いた時、まず誤ったフラのイメージを払拭し、正しいフラを一人でも多くの方に知って欲しいという強い思いがありました。そしてそれらの放送により、日本でのフラのイメージは大きく変わり、愛好者は女性・男性にとどまらず子供達にまで及ぶようになりました。その後、空前のフラブームを経て、数え切れない程の教師が誕生し、ハラウも数多く設立されました。水先案内人として大勢の方々を「フラの道」の入口までお誘いすることが出来たこと、またハワイでも日本のブームの勢いもあり、フラが盛んになっていったことは私にとって何よりの喜びでした。

しかしながら残念なことに、フラ人口の増加と共に、フラに対する愛情さえ持つことなく、単なるビジネスの目的として参入して来た人々も少なくありません。或いは、本来フラを愛していたはずなのに、ビジネスになった途端、何かが大きく変わってしまった人々...。 その様な現象を私は複雑な想いで見て参りました。

フラを愛し学ぶ者として私たちが大切にするべきことは、しっかりと

地に足をつけて技術を育み、氾濫する情報にいたずらに振り回されず、フラと自分との繋がりを一番に、常に曇りのない心で真直ぐ前進していくことであると思います。

                          井上 ケイ

現代社会に生きる私たちの多くは普段、傷つくことから身を守るため、心に蓋をして物事を感じすぎないようにしています。

そしていつの間にか、美しいものや心を震わせるような体験に対して

までも、感じにくくなりがちです。

命を祝福する踊り、それがフラです。フラを通して、ハワイの曲で歌われる自然の美しさや生きていることの素晴らしさを、心と身体で表現することにより、踊り手は身も心ものびやかで柔らかになって行きます。

そして物事を判断しない子供のような素直な感受性を取り戻すことに

より、日常が輝き出します。それは生きていることへの感謝、全ての

ものに対する優しさへとつながって行くのではないでしょうか。

フラは忘れかけていた大切なものを思い出させてくれるのです。

                          井上 真紀

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